こんにちは。シオタニアキラ(@akiraaaaa_man)です。
予約はいっぱい。行列ができるくらい忙しい。傍から見れば、それは「成功しているサロン」に見えると思います。
でも、うちのエステサロンは、まさにそんな状態のときに、あえて安売り戦略をやめるという判断をしました。
結論から言うと、うまくいっている手段ほど、目的を見失わせることがあります。
売上も、予約数も、客数も、それ自体は「成功しているかどうか」を教えてくれません。教えてくれるのは、「今、忙しいかどうか」だけです。
そして厄介なのは、忙しく回っているうちは、「そもそも自分たちは何を目指しているのか」という問いそのものが、後回しになってしまうことです。
今日は、うちのサロンが実際にその状態から抜け出した話をします。
以前の記事で、うちのサロンが妻へのインタビューから事業の軸を見つけ直した話を書きました。
実は、そのインタビューをするに至った背景には、これから話す安売り戦略の話があります。事業の軸の見つけ方についてはこちらの記事でも詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。
マツエク100本2000円は、ちゃんと機能していた戦略だった
先に言っておきたいのは、これから話す安売り戦略は、失敗だったわけではないということです。
うちのサロンは、妻が17年前に「お客さんに喜んでもらいたい」という想いだけで開業しました。
明確な事業コンセプトのようなものは、その時点ではまだありませんでした。
その中で、マツエク100本2000円という、正直かなり破格な料金でお客さんを集めていたんです。
安いから、まず来てもらいやすい。来てもらったお客さんとの会話の中で、エステに関心を持ってもらい、フェイシャルやボディの施術を提案する。
これは、スーパーの卵の安売りと同じ構造です。
目玉商品で来店のきっかけを作って、店内の他の商品で利益を出す。マーケティング用語で言えば、フロントエンドで集客して、バックエンドで収益化するという、教科書に載っているような戦略です。
妻はこれを、マーケティングの本を読んだわけでも、誰かに教わったわけでもなく、感覚でやっていました。
正直、僕はビジネス書やネットの情報からこの構造を知ったので、「この人はこれを感覚でやってきたのか」と衝撃を受けたのを覚えています。
この戦略は、うまく機能していました。マツエクのお客さんはどんどん増えて、予約は常にいっぱいの状態です。問題は、うまくいきすぎていたことでした。
目的を言語化しないまま、それでも数字が回ってしまう。だから「そもそも自分たちは何がしたいのか」を、誰も問わずに済んでしまっていたんです。
忙しさの中で、後回しになっていた問い
うまくいっているように見えて、現場では違和感が積もっていました。
安い価格で来てくれるお客さんが増えるほど、施術数をこなさないと売上が立たない。時間に追われるような営業になっていきます。技術や接客の質を、本当はもっと丁寧にやりたい。
でも、その時間の余裕が、価格設定のせいでどんどん削られていく。
たくさんのお客さんが来てくれているから、という理由で、この違和感には長いこと手をつけずにいました。
行列ができているサロンが、わざわざ立ち止まって「このままでいいのか」と考えるのは、正直難しいことです。
積み重なっていったもの
マツエク100本2000円というのは、あっという間に近隣に知れ渡り、「予約が取れない店」になったんですが、エステへの導線のいわばフロントエンドで、それが単体で利益をたくさん産むかというとそうでもありませんでした。
サロンは予約でいっぱい、でも肝心のエステのお客さんはまだ少ない。
繁盛している店に見えて、実際はそこまででもなく、オペレーションはバッタバタで、予約のブッキングなどのクレームもいただくこともしばしばでした。
安いからマツエクは人気が出るし、リピートももらえる。でも肝心の利益が増えていかない。安さゆえに来られるお客さん層もターゲットとなる「美容(エステ)に興味がある方」ではない方も多かったですね。
本来、マツエクは美容というよりファッション、オシャレに近いジャンルでもあるので。
スタッフは場数を踏んで、技術はとても向上したんですが、忙しいわりに給料が増えないとなると、正直、離れて行くスタッフもいました。
「これって私たちが本当に望む姿なのか?」と、あらためて妻も思ったようで、コンセプトを見直そうという気持ちになったんだと思います。
これが、以前の記事で書いた、妻への本格的なインタビューにつながっていきます。
目的があって、そこからズレたわけではありません。目的を言葉にしてこなかったから、うまくいっている間はそのことに気づかずにいられただけでした。
安売りをやめる、という決断の痛み
インタビューを通じて、うちのサロンが本当に届けたいものが見えてきました。それは以前の記事に書いた通りです。
でも、軸が見えたからといって、実際に価格やメニューを変えるのは簡単なことではありません。
今まで来てくれていたお客さんが離れるかもしれない。売上が一時的に落ちるかもしれない。その恐怖は、正直かなりありました。
スタッフの反応と、変わっていった収入
当時2000円から3300円に値上げし、指名料も別でいただくようにはなっていましたが、スタッフにとってはさらなる値上げには抵抗もあったようで。
「他店と同等かそれ以上の値段になればお客さんが減る」とスタッフは言ってました。
でも、それよりもイヤだったのは入客したお客さんから直接不満の声をもらうかもしれないという不安の方が大きかったでしょう。
(実際にそういう声もありました)
なのでお客さんに対しての説明期間も長めに取ってから、値上げを決行しました。
当然失客もありましたが、客単価が上がり給料も上がりました。
(これはまた別件の課題で給料を上げすぎて人件費が高騰したという問題も生みましたが)
お客さんの層も安定してきて、気持ちよく働けるようになっていったんです。
何を悩んでいたんだろうというくらいにケロッとして、今度はその値上げした価格が当たり前みたいになって行くんです。
客数は減少したんですけど、アイラッシュ部門だけでも売上と客単価、そして利益も出るようになったのは大きな進歩ですね。
うまくいっている手段ほど、目的を見失わせる
安売り戦略そのものは、間違っていませんでした。実際、あの戦略があったから、たくさんのお客さんと出会うことができたんです。
問題だったのは、戦略が目的からズレたことではありません。むしろ、戦略がうまくいっていたからこそ、「自分たちはそもそも何を目指しているのか」を考えないまま走れてしまったことでした。
手段がうまくいっているとき、人はその手段を目的そのものだと錯覚しやすくなります。
売上が伸びる、予約が埋まる、忙しくなる。これ自体は目的ではなく、あくまで手段のはずです。
でも、うまくいっている手段はそれを問い直す必要性そのものを感じさせなくしてしまうんですよね。
数字が悪いときは、誰でも立ち止まって考えます。難しいのは、数字が良いときに、同じ問いを自分に向けられるかどうかです。
よくある質問
Q. 安売り戦略自体が良くないということですか?
A. いいえ、そうではありません。安い価格で来店のきっかけを作り、他のメニューで収益化するという構造自体は、正しく機能する戦略です。
問題は、その戦略がうまくいっているせいで、「そもそも何を目指しているのか」を考える機会そのものが後回しになってしまうことにあります。
Q. 値上げやメニュー整理をすると、お客さんは離れませんか?
A. 実際、うちの場合は離れたお客さんもいました。
値上げに対して不満の声もありましたし、客数自体も減っています。なので、「値上げしてもお客さんは離れない」とは言えません。ただ、その一方で客単価は上がり、アイラッシュ部門だけでも売上と利益が出るようになりました。安さを理由に来店される方が減ったことで、お客さんの層も以前より安定しています。
僕たちの場合は、「何人のお客さんが残ったか」だけではなく、その価格でスタッフが無理なく働けて、お客さんにもきちんと価値を届けられる状態になったかまで含めて考える必要がありました。
Q. 数字が好調なときに、経営を見直すタイミングはどう見極めればいいですか?
A. 明確な基準があるわけではありませんが、うまくいっている手段があるときほど、「そもそも自分たちは何を目指しているのか」を、意識的に問い直す時間を作ることだと思います。
放っておくと、うまくいっている間はその問い自体が浮かんできません。
まとめ:問い直すべきは、うまくいっている手段の方
失敗している施策を捨てるのは、実はそこまで難しくありません。数字が悪ければ、誰でも見直そうとします。
難しいのは、うまくいっている手段を疑うことです。忙しくて、数字も良くて、お客さんも来てくれている。そんな状態のときほど、「そもそも自分たちは何がしたいのか」という問いは、後回しにされがちです。
うまくいっている手段ほど、目的を見失わせることがある。これが、うちのサロンが安売り戦略と向き合う中で学んだことです。
ここまで読んでくれてありがとうございます。

























