マーケティング

開業前に『事業の軸』とSNS設計を同時に固める理由

こんにちは。シオタニアキラ(@akiraaaaa_man)です。

「SNSの発信が続かない」
「投稿しても反応が薄い」

こういう相談を受けると、たいてい投稿頻度や書き方、使う機能といった、SNSの運用テクニックの話になりがちです。

でも、実際に話を聞いていくと、原因がSNSの使い方より手前にあることが少なくありません。事業そのものが、まだ言葉になっていないんです。

結論から言うと、事業の軸は自分の頭の中でこねくり回しても見つかりません。パソコンの前に座って美しい言葉を探すより、まずは顧客を見る。「お客さんの顔が浮かんでいないのに、軸なんて作れるわけがない」。これが現場のリアルです。その軸を固めていく過程そのものを、開業前からSNSで発信していくことで、事業とSNSが同時に育っていきます。

今日はこの考え方について、具体的にお話ししていきます。

「SNSが続かない」は、SNSの問題とは限らない

準備や施術、商品づくりを優先して、SNSは開業してから考えればいいと思っている方は少なくありません。実際、開業前は忙しくてSNSまで手が回らない、というのは正直よくわかります。事業のことは、始めてみてから学ぶ部分があるのも事実です。

ただ、それでも土台がないまま発信だけを始めると、ある問題にぶつかりやすくなります。

「誰に、何を届ける事業なのか」が自分の中で固まっていないと、投稿するたびに言葉が変わってしまうんです。

ある日は価格の安さを打ち出し、別の日は丁寧さを打ち出し、また別の日は実績を並べる。読んでいる側からすると、この人が何をしてくれる人なのか、だんだんわからなくなっていきます。

そして書いている本人も、次に何を投稿すればいいのかわからなくなって手が止まる。

これは僕がこれまで見てきた中で、開業後に発信が止まってしまうケースによく見られる流れです。一見「投稿が続かない」というSNS側の問題に見えますが、実際にはその手前、事業の言語化が終わっていないことが原因になっていることが多いんです。

SNS運用そのものの基本についてはこちらの記事でも詳しくまとめているので、あわせて読んでみてください。

「誰のために」を、自分の頭だけで決めない

事業の軸として「誰のために、何をする存在なのか」を言葉にすること自体は、間違っていません。

ただ、ここに落とし穴があります。たとえば、これから開業するエステサロンが「40代女性のキレイを応援するサロン」という軸を、本人が一生懸命考えて掲げたとします。

この軸自体は、悪くはありません。でも、それが実際に顧客の求めているものと一致しているかどうかは、また別の話なんです。

自分の頭の中だけで考えた軸には、どうしても「こうであってほしい」という本人の願望や思い込みが混ざります。だからこそ、きれいな言葉を並べる前に、もう一段手前の問いを自分に投げかけてみてください。

「その軸、誰の顔を見て作った?」

開業前であれば、想定している顧客に実際に話を聞いてみる。

競合店の口コミやレビュー、SNSで顧客が何を評価しているかを見る。

自分がこれまで、何かをして誰かに喜ばれた経験を振り返ってみる。

そして、なぜその人が自分から買ってくれたのかを、あらためて掘り下げてみる。

こうした材料をもとに事業の軸を作ると、自分の思い込みだけで作った軸より、実際の反応とズレにくくなります。

事業の軸があると、SNSの判断がラクになる

事業コンセプトというと、キャッチーな謳い文句や広告的なコピーを思い浮かべる方もいるかもしれません。でも、ここで言う事業の軸はそういうものではありません。

誰のために、何をする存在なのか。それを、顧客を見たうえで自分の言葉で言い切れる状態にしておくことです。

これがあると、SNS運用で毎回悩んでいた判断がかなりラクになります。

「これは投稿すべきか」
「どんな言葉で書くべきか」
「誰に向けて書くべきか」

事業の軸が決まっていれば、こうした判断のたびに一から考え直す必要がなくなるからです。

逆に言えば、SNSの投稿に迷い続けているとき、足りていないのは投稿のテクニックではなく、この軸であることが多いんです。

事業コンセプトの作り方そのものについてはこちらの記事でも掘り下げているので、参考にしてみてください。

事例:事業の軸は、妻へのインタビューから見つけた

ちょっとうちのエステサロンについて、実際に事業コンセプトを見直した時の話をしますね。

うちのエステサロンは、妻が17年前に自宅でひとりで開業しました。以前雇われていたサロンの指名のお客さんから「あなたに施術してほしい」と言われて急遽開業したので、当時は「お客さんに喜んでもらいたい」という想いだけのスタートだったそうです。

僕たち夫婦は再婚なので、開業当初のことは妻からあとで聞いた話です。僕自身は12年前から妻と一緒にサロン経営に関わるようになりました。

現場を見ていて、オーナーである妻の感覚だけで会社が回っていくことに、将来的な不安を感じたんです。妻が不在のときの営業の質にもばらつきが出るし、明確な軸がないと、いずれ経営が揺らぐ。そう思って、妻に開業当初の想いや、どんな人に来てほしいか、スタッフとどう関わっていきたいかを、あらためて聞いてみることにしました。

実は、この決断に踏み切った背景には、もう一つのきっかけがありました。当時、安売り戦略で予約はいっぱいだったのに、現場にはいろんな違和感が積み重なっていたんです。

その経緯についてはこちらの記事で詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。

もちろん、最初から立派な事業コンセプトなんて出てきません。身内だからこそ意見がぶつかることもあったし、言葉にならない想いを引っ張り出すのは骨が折れました。でも、その泥臭いやり取りの中にしか、本当の「軸」は落ちていなかったんです。

「そもそもなんでエステティシャンになったんや?」って聞いた時に、妻はこう言ったんです。

「私は自分の見た目にコンプレックスがあった。だからキレイになりたいと思っていたし、エステを受けてお肌が変化していくのがうれしかった。こんな気持ちを届けられるいい仕事だなって思ったから」

続けて聞きました。「実際にエステティシャンになってみてどうなん?」

「うーん、喜んでもらえてるのは感じる。でも私は基礎化粧品やエステで表面を整えても、内側から(食事とか、気持ちの持ち方とか)変えないと、本当のキレイにはたどり着かないんじゃないかって最近は思うようになった」

あー!それやー!ってなりましたね。

それでもまだ足りないパーツがある気がして、質問を続けていたんですが、答えが出たのは妻が仕事後に自宅で言った、なにげない一言でした。

「今日(いつも来てくれる)○○さんが来た途端、『今日はなんかええ情報ないの』って…」

「お客さんが求めているのは施術だけじゃないんや!美容の情報が欲しいんや」って気づいたんです。

妻が届けたいと思っていたものと、お客さんが実際に求めていたものが、ここでつながったんです。

こうして心を美しく、愛と笑顔を。身体を美しく、自信と感動を。という理念とコンセプトが決まっていきました。この軸を基準に、価格や施術メニュー、サービスのあり方も少しずつ見直していきました。

現在では「結果を出すこと」を重視したサロンへ変わり、痩身の分野では全国コンテストで2年連続グランプリをいただくまでになりました。

開業前だからこそ、発信できることがある

ここまでの話を踏まえると、開業前の時間の使い方も変わってきます。

物件を探している。
商品を選んでいる。
価格で悩んでいる。
うまくいかなくて、やり方を変えた。
想定顧客に話を聞いてみた。
その結果、コンセプトを変えた。

これって、全部SNSで発信できる内容です。

そして、これはさっき話した「顧客を見て軸を作る」プロセスそのものでもあります。想定顧客に話を聞くことも、失敗して考え直すことも、事業の軸を固めるための材料集めであると同時に、発信ネタでもあるんです。

完成してから「こんなお店ができました」と発表するより、できあがっていく過程を見てきた人のほうが、その事業への理解はずっと深くなります。悩んだ跡や、顧客の声で変わった部分まで見ているからです。

これは、単に「早くSNSを始めたほうがフォロワーが増える」という話ではありません。

事業を作ることと、その過程を発信することを、同時に進めていく。そうすることで、開業日を迎えるころには、事業の軸そのものを一緒に見てきてくれた人が、すでに何人かいる状態になります。

すでに開業している人も、今から再設計できる

ここまで読んで「もう開業してしまった」と思った方もいるかもしれません。

大丈夫です。事業の軸は、開業前にしか決められないものではありません。今からでも、顧客の声を聞き直しながら言語化し直せば、まったく遅くありません。

短期的な資金繰りへの対応が必要な状況であれば、事業の軸をじっくり整理することと、目先の集客施策を同時に走らせて構いません。どちらか一方を選ぶ話ではないんです。

また、業種によっては匿名性が求められたり、事業の性質上、事前にオープンな発信がしにくいケースもあります。そういう場合に無理に発信量を増やす必要はありません。自分の事業の性質に合わせて、公開できる範囲で進めればいいだけです。

よくある質問

Q. 事業の軸は、自分一人で考えて決めていいんですか?

A. できれば、自分の頭の中だけで決めないほうがいいです。想定顧客に話を聞いたり、過去に喜ばれた経験を振り返ったりして、顧客を見ながら作った軸のほうが、実際の反応とズレにくくなります。

Q. 開業前で、まだ顧客がいない場合は誰に話を聞けばいいですか?

A. 今、雇われて働いている業種で開業するのであれば、そのお客さんからの声を集めてみてください。ただし、今は雇われている身ですので、そのお店や会社に迷惑がかからないような配慮もお忘れなく。あとは想定している顧客像に近い友人や知人、競合の口コミやSNSを見て、「何を評価しているのか」「何に不満を持っているのか」を探ってみるのもいいでしょう。

Q. 完璧な事業コンセプトができてから発信を始めるべきですか?

A. その必要はありません。事業を作っていく過程そのものが発信ネタになるので、完成を待たずに、悩んでいる段階から発信していく方が現実的です。

Q. 顧客には何を聞けば、事業の軸を作るヒントになりますか?

A. 技術やサービスに対する評価を求めてしまいがちですが、それを聞いても目の前にあなたがいるといいことを言ってくれる人が多いです。そんなことより、選んでくださった理由、比較検討したサービスや他社、来る前はどんなことを悩んで(困って)いたのか、決め手は何だったか、などを聞いたうえで、「じゃあ、実際に利用してみて一番良かったところはどこですか」と最後に一つだけ聞いてみてください。

Q. 資金繰りが厳しい状況でも、事業の軸の言語化を優先すべきですか?

A. 二者択一で考える必要はありません。短期的な集客施策と、事業の軸を整理する作業は並行して進めて構いません。

まとめ:焦る必要はない、順番を直せば今からでも立て直せる

SNSの発信が続かない、伸びない。そう感じたときに見直すべきなのは、投稿のテクニックより先に、事業そのものが言葉になっているかどうかです。

そして、その言葉は自分の頭の中だけで作るものではなく、顧客を見ながら作るものです。

事業の軸を決めてからSNSを始める、のではなく、顧客を見て事業を作る過程そのものを、開業前からSNSで発信していく。事業を作ることと、その過程を発信することを、同時に進めていく。

SNSは、完成した事業を宣伝するためだけの場所ではありません。

発信しながら顧客の反応を見る。話を聞く。そこでわかったことを商品やサービスに戻す。そして、変わっていく過程もまた発信する。そう考えると、事業づくりとSNS発信は別々の仕事ではなくなります。

SNSは集客のためだけではなく、顧客を知りながら事業そのものを育てていく場所にもなるんです。

開業前だからこそ、その過程から見せていけばいいんです。
すでに開業していても、焦る必要はありません。順番を直せば、今からでも立て直せます。

 

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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